「冷たい熱帯魚」は2010年に公開され、映画賞も受賞した作品です。
この映画は実話の事件をモデルとして制作されており、あまりのショッキングな犯行手法で大きな反響がありました。
映画のベースとなった事件はどのようなものだったのか、この記事で分かりやすく紹介します。
冷たい熱帯魚の元ネタになった実際の事件とは
映画・冷たい熱帯魚の元ネタとなった事件は、「埼玉愛犬家連続殺人事件」です。
映画での主人公「社本」と「山崎」のモデル
共犯者の社本(吹越満)は実話の事件では
「ペットショップ・アフリカケンネル役員の山崎永幸(当時37歳)」がモデル。
主犯の村田(でんでん)は実話の事件では
「ペットショップ・アフリカケンネルの実質的経営者・関根元(当時51歳)」がモデル。
あと主人公ではないですが、映画の中で村田の妻である愛子(黒沢あすか)のモデルは、
「関根元の元妻である、風間博子(当時36歳)」です。
3人の犯人の判決
犯行に及んだ3人は、事件が発覚してから16年後の最高裁の判決で、このような結果となりました。
| 共犯者・山崎 | 懲役3年の実刑判決 (釈放済み) |
| 主犯・関根元 | 死刑 (8年後に獄中死) |
| 主犯・風間博子 | 死刑 (現在も服役中) |
実際の事件・埼玉愛犬家連続殺人の内容
実際に起きた事件、埼玉愛犬家連続殺人事件は、1993年に埼玉県熊谷市周辺で発生した連続殺人事件です。
ペットショップ・アフリカケンネルを経営する「関根元」と、アフリカケンネルの社長であり、関根元の元妻である「風間博子」が主犯となり、
後に共犯者となる山崎とともに計4人を殺害しました。
主犯・関根元はどんな人物だった?
主犯・関根元は自分の会社であるアフリカケンネルで元妻の風間博子と客として知り合い、結婚しました。
関根元は今回の事件で段階的に過激になっていったわけではなく、もともとがヤバイ性格でした。
関根元の見た目と性格
関根元の見た目はヤクザのような風貌でしたが、ユーモアな口調と話術で関わる人を引き込む魅力を持っていました。
ですが、自分をすごい経歴を持つ資産家に見せるために
- 京都大学卒業
- アフリカやアラスカで19年間生活した
- ヘリコプターやクルーザーを何機も持っている
などの嘘を雑誌やテレビ番組で平然と語っていました。
「殺しのナンバーワン」と自負していた
もし殺しのオリンピックがあったら、金メダル間違いなしだ。
と言うほど、関根元は自分の犯行に自信を持っており、証拠隠滅に関しての絶対的な自信を持っているようでした。
ブリーダーとしては天才的な腕だった
関根元はペットや猛獣の扱いにかけては天才的で、ブリーダーとしての腕は非常に優秀でした。
日本におけるアラスカン・マラミュートという犬種の繁殖の第一人者であり、シベリアン・ハスキーブームの仕掛け役とも言われています。
商売に関しては悪質だった
- すでに売った犬を自分で盗んで別の客に売る
- わざと客の犬を不調にして新しい犬を売りつける
など、このような悪質な商売を何度も繰り返しており、その悪どさは同業者にも知られていて敬遠されていました。
関根元の元妻・風間博子はどんな人物だった?
関根と出会うまでは割と真面目に過ごしてきた
風間博子は過去には「お嬢様育ち」と言われ、父親の手伝いのために測量の勉強をしたり、保育士として働いたりもしていました。
風間博子はアフリカケンネルの社長ですが、それは登記上ではそうなっているだけで、担当していた業務は経理。
もともと関根元が単独で経営していたアフリカケンネルという会社を個人会社から株式会社化したことにより、風間博子が社長になることになりました。
しかし、実質的な経営者は元夫である関根元で、風間博子は経理や資金管理を担当していました。
関根元の激しい金使いの粗さによる税金の滞納から逃れるため、偽装離婚をして財産を風間名義に書き換えたり、
形式的に彼女を社長に据えることで関根元自身が経営に関与していないように装いました。
風間博子は子どもが2人いた
風間博子は事件当時、
- 13歳の長男
- 7歳の長女
の2人の子どもがいました。
この2人は関根元との子ではなく、関根元との結婚の前に結婚してできた子です。
犯行ではかなりの異常性があった
一見すると風間博子はまともで優秀な人な感じがしますが、犯行のやり方はかなり異常でした。
遺体を解体している最中に、鼻歌を歌いながら手際よく作業を行っていたり、
被害者の車を東京駅に放置して失踪を装う工作を行って証拠隠滅を図ろうとしたりと、
普通の人なら逃げ出したくなるような場面でも、冷静に事を進めていました。
共犯者・山崎永幸はどんな人物だった?
ブリーダーからアフリカケンネルの役員へ
共犯者となった山崎永幸はもともとブリーダーとして活動していました。
主犯・関根元とはドッグショーで知り合い、関根元に経営を学ぼうとして関根元の店に訪れるようになり、後にアフリカケンネルの役員に就任しました。
しかし、役員なのに業務の実態は運転手や店の手伝いしかやらせてもらえませんでした。
山崎永幸は群馬県の山奥にある、貨車を改造した通称「ポッポハウス」と呼ばれる自宅に一人で住んでいました。
この周囲に人がほぼいない環境が、後に遺体の解体・焼却場所として関根元に利用されることになります。
埼玉愛犬家連続殺人事件の犯行動機や手法
犯行の動機
最初の事件の前は、関根元の店・アフリカケンネルは倒産寸前レベルで経営が苦しい状態でした。
1人目の被害者である会社役員Aの殺害にいたった経緯は、高額な犬の取引をめぐる金銭トラブルが直接の動機でした。
主犯・関根元は2匹の犬のつがいを被害者のAさんに1,100万円という法外な金額で売りつけましたが、
後に被害者のAさんは、知人からその犬がたった数十万円の相場であることを知り、自分が騙されたことに気づき、返金を強く求めました。
しかし、倒産寸前レベルで経営に困っていた関根元と風間博子はお金が返せなかったので、Aさんの殺害を計画することに。
その後、他の被害者3人は同じくお金をだまし取った際の金銭トラブルや、1人目の被害者Aさんの殺害の隠蔽のために行われ、計4人の殺害となりました。
山崎を脅して協力者にさせることにした
最初の事件で、関根元は殺害した被害者Aの遺体を山崎に見せつけ、
- お前もこうなりたいか?
- 子どもは元気か? 元気が何よりだ
などと言って山崎本人やその家族に危害を加えることをほのめかして、山崎に犯行に無理やり協力させました。
他にも、山崎は犯行の時すでに関根元が経営する会社のアフリカケンネルの役員になってしまっていたことと
「遺体なき殺人」という証拠隠滅がされていたため、
「警察に駆け込んでも証拠がなく、主犯・関根元を逮捕できず、報復されるかもしれない」
として報復を恐れ、犯行に協力せざるを得なくなってしまいました。
犯行の手法
毒薬を使用
獣医師から譲り受けた犬の殺処分用の毒薬「硝酸ストリキニーネ」を、栄養剤と偽って被害者に飲ませるという手法が取られました。
「ボディを透明にする」遺体処理
この事件が世間に大きな衝撃を与えたのは、主犯・関根が提唱した「ボディを透明にする」という証拠隠滅方法です。
この手法を簡単に説明すると、
- 遺体を共犯者である山崎永幸の自宅風呂場で細かく解体。
- 肉片などは細かくして川に流し、骨はドラム缶で灰になるまで焼却して山林に遺棄。
この手法で、主犯の関根は証拠が残らない「遺体なき殺人」と呼ばれた完全犯罪を目論みました。
事件の発覚
1994年に、今回の事件とは別の大阪愛犬家連続殺人事件がニュースになりました。
この大阪愛犬家連続殺人事件は今回の事件とは全く無関係ですが、この事件の発覚により、
埼玉でも同じような事件が起きている
と事件も表面化し、最終的に共犯者・山崎の自白によって事件が明らかになりました。
山崎の妻の逮捕により、自白を決意
警察が山崎に事情聴取を行いましたが、山崎は事件の関与を否定。
その後、事件の発覚を恐れた山崎は妻とともに行方をくらましました。
この行動によって事件への疑いが強まり、警察は山崎夫婦の行方を負うために、山崎の妻に対して(今回の事件とは別の)詐欺容疑で逮捕しました。
山崎は
自分の犯行の詳細を自白する代わりに、妻を保釈させる。
という条件のもと、警察に自首する形になりました。
証拠が見つかり、犯人逮捕へ
その後、山崎の自白によって被害者の遺留品が見つかりました。
これが証拠となり、事件に関わった犯人全員が逮捕され、事件は収束しました。
最終的に主犯の関根と風間は裁判で死刑となり、
共犯者となった山崎は「脅されて仕方なくやった」として無罪を主張しましたが、
裁判所は「警察に駆け込むなどの手段はあった」として懲役3年の実刑判決となりました。
埼玉愛犬家連続殺人事件のその後
死刑となった風間博子には事件当時2人の子どもがいて、
そのうちの長女であった希美さん(仮名)が28歳になったときにインタビューを受け、この事件について語っています。
事件当時、周りから避けられる
当時は小学3年生であった希美さんは、両親が逮捕されたことがよく理解できないまま、祖母のマンションに引っ越すことに。
友達に引っ越すことを伝えようと電話をかけても、事件のことを知っている友達の親から居留守を使われたり、
友達が電話に出ても後ろから「切りなさい」と声が聞こえたりしていたそうです。
事件のことを知る
周りの大人は希美さんを気遣って事件のことを隠していましたが、
希美さんが高学年になったころ、祖母が隠していた週刊誌を見つけてしまい、自分の親が事件の当事者だったことを知ることになりました。
親のことを隠し、苦しむ人生になった
希美さんは事件を起こした両親の子どもだということを隠し続けました。
中学の頃に介護ボランティアをするようになりましたが、世間話のなかで
- 出身地が事件があった埼玉であること
- 姓が「風間」であること
- 希美さんは母親に顔が似ている
このことで、「もしかして?」と話題になることが嫌で、ボランティアにも行かなくなってしまいます。
父親(関根元)に感謝の手紙を書いた
希美さんが15歳になったころ、両親には死刑が確定しました。
希美さんはこれまで両親のことを隠そうとして生きてきましたが、祖母から
「何があっても、お父さんがいたからこそ、あなたがいるんだよ」
と言われ、少し心を開きます。
希美さんは刑務所にいる父親・関根元に対し感謝の手紙を書くと、関根元から「会いに来てほしい」と返信が来ます。
しかし、希美さんは
「自分の父親が変わり果てた姿になっているかもしれない」と心配になり、会いに行けませんでした。
数年後に母親に面会に行ったときに、父親にお金を差し入れましたが、受け取りを拒否された。
それ以来、希美さんは父親との交流はなかったとのことです。
映画と実話の事件の違い
| 冷たい熱帯魚 | 実話の事件 | |
|---|---|---|
| 犯人の人数 | 3人 | 3人 |
| 経営していた店 | 熱帯魚店 | 犬の販売店 |
| 共犯者の娘 | 主犯の店でバイト | 登場しない |
| 犯行の方法 | 遺体なき殺人 | 遺体なき殺人 |
| 結末 | 犯人全員死亡 | 主犯2人:逮捕・死刑 共犯者:自首・懲役3年 |
映画・冷たい熱帯魚では、共犯者の家族のしがらみや結末などは映画のストーリーとして脚色されていますが、犯行の手口や主犯2人の性格などは実話の事件とほぼ同じです。
まとめ
- 実話の事件では主犯2人は死刑、共犯者は懲役3年
- 映画・冷たい熱帯魚と実話の事件の犯行の手口はほぼ同じ
- ストーリー構成は映画用に脚色されている
- 犯人の子どもは事件後も苦しい思いをしていた
以上が、映画・冷たい熱帯魚のモデルとなった事件の解説でした。
実話の事件としてもかなりショッキングな内容となっていることと、映画としてもこの事件がよく再現されているため、これからも事件のことは忘れられることはないでしょう。