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映画ディア•ファミリー実話の元ネタと原作小説の内容から結末まで。モデルとなった家族の現在と、娘はどうなったのか

映画ディア•ファミリー実話の元ネタと原作小説の内容から結末まで。モデルとなった家族の現在と、娘はどうなったのか

2024年6月14日に公開となった映画、ディア・ファミリー。

壮絶な人生を送ることになった家族と、感動のストーリーがある素晴らしい作品ですが、話の元ネタはどこからなのか?

そして、作中で語られる家族の現在について解説していきます。

ディア・ファミリーの元ネタと原作

ディア・ファミリーの話のモデルである原作は、『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』という本です。

ディア・ファミリー原作ストーリー要約

映画と原作では大まかなストーリーは同じですが、原作のストーリーはかなりリアリティ溢れる内容です。

ここでは映画の話ではなく、原作でのストーリーを簡単に解説します。

※この先はネタバレが含まれていますのでご注意ください。

多額の借金を抱えた小さな町工場の経営者が、娘の命を救うために未経験の医療の世界へ

小さな町工場の経営者、筒井宣政さん(映画では大泉洋)は、もともとビニール樹脂を加工する会社でした。

作っていたのは、ビニール製のハンドバッグやチューブ類、縄跳びなど。

工場はもともと筒井さんの父親から引き継いだものの、1億5000万円ほどの借金を抱えた工場でした。

現在のお金の価値に換算すると、約6億円もの借金です。

毎日のように金融機関に融資を頼みに周る、自転車操業な状態でした。

生まれつき心臓疾患を抱えた二女が誕生

その家庭で生まれた二女の娘・佳美さんは生まれつき"何か"の心臓疾患を持って生まれましたが、新生児なので精密検査に体が耐えられなく、検査ができません。

おおむね9歳ごろ、体重が20kgを超えないと機器やメスを入れて調べることができないと医者に言われます。

命に関わる病気を持っているのに、9年間も治療ができないんです。

その精密検査が可能になった9歳のときに『三尖弁閉鎖症』という診断をされ、他にも異常がある場所は7ヶ所もありました。

現代の医療では手術は不可能とされ、そして最後には余命10年を宣告されてしまいます。

新商品の開発に成功し、手術のためのお金の蓄えはできていたが・・・

町工場で新商品の開発をし、それが海外でヒットして溜まっていた借金を7年で返し、

手術のためのお金の蓄えが2,000万円ほどできていました。

日本では手術不可能と言われた娘の治療ですが、

『お金が掛かってもいいから海外で治療ができないか』と医師に相談しました。

しかし、医療先進国のアメリカにカルテを送っても『手術は不可能』と返されます。

当時は1970年代であり、
今から50年以上前であるため医療も今ほど進歩しておらず、普通なら諦めるしかありませんでした。

娘のために蓄えた2,000万円のお金の使い道を失ったので、寄付という形で使おうとしました。
しかし、

そんな大金をウチの病院でもらっても、いまは誰もそんな研究をしていませんよ。

と言われます。

娘の病気と同じ症例を研究している医師との出会い

寄付はいらないと言われましたが、担当医師から

最先端の医療の研究をしている、日本トップクラスの頭脳を持つ人たちが集まる医療大学を紹介され、

『そこにお金を寄付したらどうか』と提案されます。

そこには娘の病気と同じ症例の論文を2度も出している大学の助教授がいました。

希望を持ち、『娘に手術をして、助けてもらうことはできませんか?』とお願いしたところ、

できません。

今は世界中の医師がその手術方法を探しているところです。
新しい手術法ができるまで待ちましょう。

と言われます。

また・・・待つしかないのか。

しかしその1ヶ月後にその助教授から連絡があり、

そのお金で、一緒に人工心臓を作りませんか?

と連絡を受けました。

医療の知識が何も無い筒井さんは、さすがに無謀だと思い、最初は気が引けました。

娘のために人工心臓を自分で作る決意をする

できなくても、医療の発展のためになります。

こういうことにお金を使えたのであれば、皆さんも満足するのでは?

という助教授の追加の言葉で、筒井さんは気持ちが変わりました。

もともと寄付として使おうをしていたこともあり、こういう理由があるのならばと、筒井さんは人工心臓を作る決意をします。

他の研究者に諦めろと言われるが聞かない

筒井さんは研究会や大学に通い続けるが、そこでの研究者には

無理だから辞めたほうがいい。

と言われますが、筒井さんは聞きません。

逆に人工心臓を作るために新会社を設立し、
工場の一角に研究室を作ります。

工場で身につけた知識と技術が医師たちの信頼を厚くしていく

筒井さんの工場はチューブ類の製造をしていたので、その分野での知識・経験・技術が豊富でした。

医療でチューブを使った機器の治療もするため、

医師たちから相談を受けたり、実際に作ることも多くありました。

そうした依頼をこなしていくうちに、筒井さん自身も医療関係の知識を身に着けていき、

今まで筒井さんを変人扱いしていた研究者も信頼を持つようになり、

研究者の一員として認められていきました。

人工心臓の試作品が完成

やっとの思いでここまで来ましたが、

試作品の完成に8年以上かかり、投資額は8億円以上になっていました。

動物実験までこぎつけますが、

動物実験が終了するだけでも100億円以上、
人体で使えるようになるには1,000億円以上

という莫大な資金がかかることが分かりました。

本来、人工心臓レベルのようなものを作るというのであれば、

色んな大企業の技術や資金を集結させて作り上げていく大規模なことになるんですが、

個人レベルに近い筒井さんの中小企業では、とても不可能なものでした。

研究をバルーンカテーテルに方向転換する

人工心臓を作るのは無理だと悟った筒井さんは、バルーンカテーテルを作ることに方向性を変えます。

すでに人工心臓の開発で借金を重ねていたので、『食っていくため』にお金を稼がなければいけない。

なので、開発を完全に辞めるわけではなく、商売としてバルーンカテーテルを販売することにします。

バルーンカテーテルを選んだ理由は、

バルーン部分の作り方がほとんど人工心臓と同じで、今まで培ってきた知識と経験がそのまま使えたから。

そして、『心臓を助けるもの』と同じジャンルだったためです。

それでも、壁は高かった

バルーンカテーテルは人工心臓ほど大規模ではありませんが、

すでに日本の大学と大企業が組んで5年と7億円をかけて開発に取り組んだが、実現していなかった。

そういった理由もあり、かつて人工心臓を作ろうと持ちかけた助教授にも

『筒井さんには無理です。』

と言われます。

じゃあなんで最初に
『一緒に人工心臓を作ろう』なんて言ったのか・・・?

それは、最初からほぼ無理だと分かっていた助教授も、

手術のためのお金の使い道を見失い、困っていた筒井さんにお金の使い道を提案し、

それでうまくいかなかったとしても
医療の発展には貢献するので、満足いく結果にはなるだろう。

という親切心からでした。

人工心臓は作れなかったことを娘に打ち明けに行った

『人工心臓を作って、お前を助ける。』

それは約束事ではなく、親としての"誓い"でした。

人工心臓を諦めるということは、
娘の命を諦めるということ。

バルーンカテーテルは心筋梗塞の病気を助ける役割なので、

違う病気を持つ娘の命は助けられません。

胸が詰まりそうな想いを抱えながら、
そのことを娘に伝えに行きます。

最初はお前のための人工心臓を作ってたけど、今はもう人工心臓じゃなくてカテーテルを作ってるんだ。

心筋梗塞の人を助けるためのカテーテルなんだけど・・・ごめんなぁ・・・。

すると、娘はこう答えます。

私の病気のために、ここまで頑張って勉強してくれたんだから。

それに、人の命を助けるものを作るんでしょ?
すごく嬉しいよ。私の誇りだよ。
謝ることないよ。

これを聞いて、筒井さんは悲しみました。

なんて優しい子なんだろう。

最初に『助けてやる』なんて言ったのに、
自分たちの力ではどうしようもなく、

なんと声をかけたらいいのか
分かりませんでした。

カテーテルの試作品が完成

カテーテルの開発から1年半後、試作品が完成しました。

それを、かつて『一緒に人工心臓を作ろう』と持ちかけた大学の助教授に持っていきました。

そんなものを使うわけにはいきません。

予想外のことを言われました。

5万回の耐久試験もクリアし、
『これでいける!!』と確信していた筒井さんは食い下がりましたが、助教授は怒りました。

人の命が掛かっているんです。
どこの馬の骨が作ったのか分からんものを、医師免許にかけて使うわけにはいきません。

もう来ないでください。

使わないどころか、
出入り禁止です。

『馬の骨』とまで言われた筒井さんは屈辱でした。

この助教授にとって、筒井さんはただの熱心な根性精神の町工場社長にすぎなかったんです。

しかし、筒井さんは

  • 現状で使われているカテーテルで医療事故の確率が高いこと
  • 教え子の論文テーマで使えること
  • 自分の博士号取得のための論文に利用すればいいということ

つまり、『研究の功績は全部あなたのものにすればいい。』
と持ちかけたんです。

すると助教授は、この提案に心が揺れたのか若い医師を連れてきて、協力するように言いました。

カテーテルの動物実験までこぎつける

若い医師の協力もあり、研究は動物実験までこぎつけます。

2ヶ月かけて13頭の犬を使い、実験を繰り返しました。

不具合こそありましたが失敗はほとんど無く、実験は順調に進んでいきました。

人体実験までたどり着いた

ついに作ったバルーンカテーテルの人体への使用が承認されました。

あとは、『使わない』と言った教授の許可のみ。

2ヶ月後、協力していた若い医師から、

教授の許可を取りました。

と連絡が。

そして、実際に人体に使う手術が開始しました。

手術室には筒井さんも立ち会い、様子を見ていましたが、

動物実験のときと同じく、
人体に使っても問題なく作動していました。

他の医師からも、

悪くないですよね。

という声が上がっていました。

そして、さらに2本3本と実際に人体に使われていくうちに、

あの新しいバルーンカテーテルは
なかなか使いやすいらしいぞ。

なら、こちらにも1本使わせてくれませんか?

という、非常に良い評判が広がっていきました。

そしてほどなくして、最初に使うのを断った教授から

ちょっとウチまで来てくれ。

と連絡が。

筒井さんは『叱られるかもしれない』と思いましたが、

なかなか評判がいいらしいじゃないですか。
みんなそう言ってますよ。

私も1本使います。

『馬の骨』とか
『医師免許にかけて使わない』とか言っていましたが、

確かな結果を出したことにより、
教授も認めたようです。

筒井さんはこの時、教授に
1本32万円でバルーンカテーテルを販売しました。

これが筒井さんが作った
バルーンカテーテルの初売上となりました。

まさに逆転勝利です。

娘は助からず、亡くなってしまった

結果として、筒井さんは娘を助けることはできませんでした。
23歳という若さでこの世を去ります。

以上が、原作での大まかなストーリーです。

作中の家族の現在は?

ディア・ファミリー主人公の筒井宣政さんの現在は、株式会社東海メディカルプロダクツの会長をやっています。

社長は退任し、現在の社長は兄弟の筒井康弘さんが引き継いでいます。

会社はかなり大きくなった

東海メディカルプロダクツは2023年時点で

  • 従業員数250人超え
  • 総売上は62億円超え

となっています。

扱っている製品は主にカテーテルとなっていますが、

心臓関連のものだけでなく、様々な部位に使えるカテーテルを開発し、医療に貢献しています。

親として当然のことをしただけ

筒井宣政さんは、どこにでもあるような小さな町工場で医療に関しても素人な状態から、医療会社の会長まで上り詰めましたが

これは『ただ会社を興したい』とか『ただお金を稼ぎたい』という野心からではなく、

『我が子の命を救いたい』という親として当然のことを追い続けていたら自然とそういう形になっただけで、何も特別なことはしていない。

と筒井宣政さん本人も語っています。

実話のノンフィクションだからこそ、ストーリーに度肝を抜かれる

もし作り話だったら刺さらない

これがフィクションの作り話となっているなら、

『いやいや!こんな現実離れした話あるわけねーでしょ!』

と鼻で笑ってしまうでしょう。
話がぶっ飛びすぎて。

ディア・ファミリーがここまで感動するストーリーで魅力があるのは、ノンフィクションで実話だからこそ。

町工場経営者から医療関係の会社の会長になるなんて、とても信じられない話です。

もし自分の父親が、『自分で人工心臓作っから!!』

なんて言おうものなら、『無理だからやめとけ!』
って全力で止めにかかるでしょうね。

高名な研究者や医師たちも称賛している

医療とは無縁の人が、イチからこの医療機器を作り上げたことに対して、最前線で医療に従事している方たちからも称賛の声が上がっています。

医療業界で開発をしている方たちを差し置いて、未経験者がここまでのことを成し遂げたのは驚きしかありませんね。

筒井宣政さんは映画内で出演する話も来た

映画主人公のモデルである筒井宣政さんは、『作品の中に登場してもらえないか』というオファーを受けたそうなんですが、

『プロの役者さんたちが本気で取り組む現場に自分のような素人が入るなんてとんでもない』と、そこは断ったそうです。

映画で登場する記者は原作ではいない

有村架純さんが演じる記者は、映画オリジナルでの人物で、原作には登場しません。

ディア・ファミリーの映画を観た人たちの感想

まとめ

ディア・ファミリーの原作ストーリーまとめです。

  • 人工心臓を作ろうとする話は映画と同じ。
  • 筒井さんの町工場は多額の借金を抱えていた。
  • 人工心臓の試作品が完成し動物実験まで行ったが、その先で莫大な資金が必要なので断念。
  • 人工心臓の研究で背負った借金もあり、食っていくためにもバルーンカテーテルの開発に方向転換。
  • 大学病院の教授には『使わない』と一蹴されたが、人体実験まで成功させ、その教授から初売上を出す。
  • 娘は助からず、亡くなってしまった。

簡単にお話ししてきましたが、
映画ではここまで細かく話を作ると尺が足りません。

映画の方も素晴らしい作品となっていて、実際に観た人からは『いい映画だった』と好評です。

映画を観た方も、もっと細かくディア・ファミリーのストーリーが知れる原作もぜひ1度読んでみてはいかがでしょう。

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