イギリスのドラマ『アドレセンス』は、
13歳の少年が同級生の女子生徒を刺殺した容疑で逮捕されるという衝撃的な設定と、
全編ワンカット撮影という革新的な演出で世界的な話題を呼びました。
この記事では、
- 父の「目逸らし」という最重要伏線の意味
- ジェイミーとマノスフィア思想の関係
- 犯行性の曖昧さが持つ演出上の意図
- ラストシーンで問われるものとは
- 制作陣が語った制作意図
こちらを解説していきます。
『アドレセンス』とはどんなドラマか
2025年3月にNetflixで世界配信されたイギリスのドラマミニシリーズです。
主人公は13歳の少年ジェイミー・ミラーで、同級生の女子生徒ケイティを殺害した容疑で逮捕されるところから物語が始まります。
全4話構成で、各話は約50〜60分にわたる長回しの一発撮りで撮影されています。
全編ワンカット(ワンテイク)という演出が最大の特徴で、
視聴者は「いま起きていること」を見ているような中で物語を体験することになります。
『アドレセンス』の伏線を解説
父エディの「目逸らし」
物語でとりわけ重要な伏線が、
幼いころのジェイミーがサッカーの試合でミスをした瞬間、父エディがわざと目を逸らしたというエピソードです。
このシーンは作中で2度登場します。
ジェイミーは
失敗した直後にまず父の顔を確認する
という行動パターンを持っており、常に父からの承認を強く求めていたことが分かります。
見て見ぬふりをされた経験が、体格も小柄で内向的なジェイミーが「男らしさの欠如」に深いコンプレックスを抱く、決定的なきっかけとなりました。
ネット上の行動と「80対20の法則」
ジェイミーが
- SNS上でモデルへの誹謗中傷を書き込んでいたこと
- 女性を「モノ扱い」し、性の対象としてのみ捉える傾向
これらも重要な伏線となっています。
特に注目すべきは、彼が「80対20の法則」という考えを口にする場面です。
ジェイミーがこのような行動をとるようになったのは、
嘘か本当かも分からない、ネットでの有害な情報を浴び続けたから。
ジェイミーはまだ13歳。
大人であれば一般常識としての知識はある程度あるので、ネット上の偏った解釈や思想にはとらわれにくいですが、
13歳の少年であれば、まだ社会にも出ていない子どもです。
ネット上で見つけた情報が正しいのかどうかの判断はできないでしょう。
脚本家のジャック・ソーンさんはマノスフィア(男性中心主義的なネットコミュニティ)を徹底的にリサーチする中で
「10代の自分であれば、その考え方に惹かれていたかもしれない」
と語っています。
犯行性の意図的な曖昧さ
本作が伝統的な犯罪ドラマと大きく異なるのは、犯行性を確定させる描写を意図的に避けている点です。
- 監視カメラ映像が不鮮明
- 凶器や血痕の服が発見されない
- 身体検査の結果に矛盾がある
これらは
「本当にジェイミーが犯人なのか」
「この事件をどう解釈すべきか」
という問いを視聴者に投げかけるための演出と考えられます。
【アドレセンス】の結末を簡単にいうと
結論から言うと、事件から13か月後、更生施設のジェイミーから父エディへ電話が入ります。
ジェイミーは父の誕生日を祝う言葉のすぐ後に
「罪を認めようと思う」
と淡々と告げました。
彼が犯した行為の重さや命の尊厳をまったく理解していないことが、このシーンから浮き彫りになります。
『アドレセンス』のラストの意味とは
家族の崩壊と問い直し
最終話では、エディとマンダが車の中で
「どこで間違えたのか」
「育て方は正しかったのか」
と自らを深く問い直す場面が描かれます。
エディが息子の部屋でテディベアを抱きしめて泣き崩れる描写は、
もう二度と以前のような親子関係を取り戻すことはできない
という、永遠の喪失感を意味しています。
見えない加害者の存在
本作のラストで最も重要なのは、
事件を引き起こした「見えない加害者」、
つまり、
オンライン上の扇動者やインフルエンサーが最後まで現れず、罪に問われることもない
という現実を描いている点です。
エディが事件後もマノスフィア(男性中心主義的なネットコミュニティ)を支持する人間が身近にいることを知るシーンは、
過激な思想が社会に根強く存在し、常に次の加害者が生まれうる危険性を意味しています。
『アドレセンス』制作陣の制作意図
親子間の対話を生み出すために
主演・共同製作のスティーヴン・グレアムさんは
「少年が少女を刺したという事件が何度も繰り返された。
私はただそのことに光を当てたかったのです。
親と子どものあいだで対話を生み出すことが最大の目的でした」
と語っています。
『アドレセンス』は実話ではありませんが、イギリスで実際に起きた少年による殺人事件からヒントを得て制作されました。
「完璧な被害者」を登場させない意図
クリエイターのジャック・ソーンさんは
「視聴者にジェイミーを理解してほしいが、共感してほしいわけではなかった」
と語っています。
加害者の生い立ちに虐待などのわかりやすい原因を用意しないことで、
特定の理由だけで終わらせない「理由なき攻撃性」を描き出している点こそが、『アドレセンス』の最大のテーマと言えるでしょう。
誰もが加害者にも被害者にもなり得るという現代社会の構造そのものを問い直すという作品です。
まとめと人気の考察解説記事
- 『アドレセンス』は13歳の少年による殺人を全編ワンカット撮影で描いた、2025年の話題作
- 「父の目逸らし」という伏線が、ジェイミーの男らしさへのコンプレックスの形成を示していた
- マノスフィア的な思想がSNSを通じて少年の内面を蝕んでいたことが、伏線として丁寧に描かれている
- ラストシーンは家族の取り返しのつかない喪失と、罪に問われない「見えない加害者」の存在を示している
- 親子間の対話を促すことが制作陣の最大の意図であり、加害者を「理解」させるための作品だった