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【すばらしき世界】 実話の前科10犯を持つモデル人物の歩んだ人生を解説

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【すばらしき世界】 実話の前科10犯を持つモデル人物の歩んだ人生を解説 サムネ

映画『すばらしき世界』は、

前科10犯・延べ24年近くを刑務所で過ごした男が出所後に「普通の生活」を掴もうとする姿を描いた、役所広司さん主演の人間ドラマです。

2021年に公開され、実在した人物の人生をモデルにしているとあって、公開当時から大きな注目を集めた一作になります。

この記事では、

  • モデルとなった実在の人物・田村義明さんのプロフィール
  • 田村義明さんの波乱の人生(時系列)
  • 映画と実話の違い
  • 映画が伝えたかったこと

こちらを解説していきます。

映画『すばらしき世界』は実話をモデルにした作品

結論からいうと、映画『すばらしき世界』は実話をモデルにした作品です。

直木賞作家の佐木隆三さんが、実在の人物・田村義明さんをモデルに書き上げたノンフィクション小説『身分帳』(1990年、講談社)が原案になっています。

監督・脚本は西川美和さんが手がけ、2021年2月11日に公開。

原作の舞台から約35年後の現代を設定に置き換え、3年間のリサーチを経て完成させた作品です。

映画は第56回シカゴ国際映画祭で観客賞・最優秀演技賞(役所広司さん)のW受賞を果たし、第45回トロント国際映画祭にも正式出品されています。

モデルとなった田村義明さんとは

田村義明さんは、戦後の混乱期に戸籍もなく生まれた実在の人物です。

前科10犯・延べ約24年間という服役歴を持ち、成人してからシャバで2年以上続けて暮らしたことがないという、壮絶な人生を歩んだ方です。

田村義明さんのプロフィール

項目内容
出生地福岡県福岡市(出生届なし・戸籍なし)
出生芸者の母・千代と海軍大佐の間に生まれた私生児
海軍大佐(戦死)
少年時代アメリカ軍将校宅に養子として引き取られ「ジミー田村」として神戸で育つ
前科前科10犯、延べ約23〜24年間刑務所で生活
最後の出所45歳で出所(13年間の刑期を満期出所)
死亡出所から約5年未満で病死(アパートで孤独死)

田村義明さんは自ら佐木隆三さんに連絡を取り、「自分をモデルに小説を書いてくれ」と依頼したことが、原作誕生のきっかけとなりました。

映画『すばらしき世界』の実話の時系列

幼少期:戸籍のない子どもとして生まれる

田村義明さんは、芸者をしていた母・千代と海軍大佐の間に生まれた私生児でした。

父は戦争で戦死し、戦後の混乱期に戦争未亡人となった母は、4歳の田村さんを孤児院に預けます。

その後、アメリカ軍の将校宅に養子として引き取られ、「ジミー田村」と呼ばれながら神戸で育ちました。

しかし帰国の際に本籍地が不明だったため正式な養子縁組が成立せず、ここでも家族と別れることになります。

12歳で少年院へ・各地を転々

別の家庭に引き取られた田村さんでしたが、そこでも馴染めずに非行行動を起こすように。

12歳で非行少年として京都・宇治初等少年院に収容され、その後も各地の少年院を転々とすることになりました。

成人後:前科10犯・延べ24年の服役生活

成人してからも犯罪を繰り返した田村さんは、前科10犯・延べ約24年間を刑務所で過ごします。

殺人の罪を含む重罪を犯し、最後の服役では13年間の刑期を全うしました。

成人後に娑婆で2年以上続けて暮らしたことがないというのは、にわかに信じがたい経歴です。

1988年:ラジオ番組で全国に紹介される

1988年(昭和63年)、文化放送でラジオ番組『戸籍のない男〜バラ24本の幸せ〜』が放送されました。

田村さんの人生が全国へと紹介されたこの番組を、後に監督の西川美和さんが知ることとなります。

45歳での出所・佐木隆三さんへの依頼

最後の13年の刑期を終えた田村義明さんは、45歳で満期出所します。

服役中に佐木隆三さんの犯罪文学を読んで感銘を受けていた田村さんは、出所後に自ら佐木さんに連絡を取りました。

「自分をモデルにして小説を書いてくれ」

その依頼を受けた佐木隆三さんは、田村さんが見せた戸籍謄本があまりに真っ白なことに驚き、引き受けることを決意。

佐木隆三さんはその後4年以上にわたって田村さんと交流・取材を続けていきました。

出所後の田村さんは、

「もう一度ちゃんと働いて生きていきたい」

と本気で考えていたとのこと。

しかし社会の目は冷たく、日常の小さなことで何度も躓きを繰り返していました。

1990年:「身分帳」出版〜孤独死

1990年6月26日、佐木隆三さんは小説『身分帳』を講談社から出版します。

「身分帳」とは正式には「被収容者身分帳簿」のことです。

刑務所に収容された受刑者の経歴・行動・家族関係などを記録した書類で、田村さんの人生そのものを映し出すタイトルでした。

しかし出版からわずか半年後、田村義明さんはアパートの一室でひとり息を引き取ります。

身寄りのなかった田村さんのために、佐木隆三さんが葬儀を執り行いました。

出所から5年を迎えるわずか4ヶ月前のことでした。

映画『すばらしき世界』と実話の違い

映画は原案の『身分帳』をベースにしながらも、多くの点でアレンジが加えられています。

項目映画での描写実際の事実
主人公の名前三上正夫(架空名)田村義明さん(実在)
時代設定約35年後の現代(2020年代)1980〜90年代の話
取材者の設定テレビ局のスタッフ(架空)作家の佐木隆三さんが田村さんから直接依頼を受けた
母親を探すシーン映画に登場原作にはない映画オリジナル
オリジナルキャラクター複数追加されている原作にはいないキャラクター
主人公の最期心筋梗塞で死亡(劇中)田村さんは出所後5年未満で病死

舞台を現代に変えた理由

原作『身分帳』は1980〜90年代を舞台にした話ですが、映画では約35年後の現代へ舞台を移しています。

これは、「元犯罪者の社会復帰の難しさは30年以上経った今も変わっていない」というメッセージを伝えるための選択でした。

取材者がテレビ局スタッフに変わった

実際には作家の佐木隆三さんが田村さんから直接「小説を書いてくれ」と依頼されたのが発端でしたが、

映画では仲野太賀さんが演じるテレビ局のスタッフという設定に変わっています。

また映画には、原作にはない母親を探すシーンや、複数のオリジナルキャラクターが加えられており、より感情的な奥行きを持たせた構成になっています。

映画『すばらしき世界』が伝えたかったこと

監督の西川美和さんは、インタビューでこう語っています。

「映画は三上の個性を軸に語られていくが、

見えてくるのは、三上の冒険を通して、

それを取り囲んでいる私たちのほうかもしれない」

三上という一人の男の再出発を描きながら、

「その男に冷たい目を向けているのは社会であり、私たち自身ではないか」と問いかけているわけです。

さらに西川美和さんはこうも語っています。

「社会や時代の批判だけでなく、
人ががむしゃらに生きていく姿のまぶしさや、
人が温かい言葉をちょっとでもかけてくれたときの嬉しさを受け取ってほしい」

タイトルを原案の『身分帳』から『すばらしき世界』に変えたのも、批判だけではなく両義性を持たせたかったから。

社会に弾かれながらも、それでも生きようとする人間の姿と、そんな人間を受け入れられない社会の現実。

その両方を描いた作品といえるでしょう。

まとめと人気の実話解説記事

  • 映画『すばらしき世界』は実在の田村義明さんをモデルにしたノンフィクション小説『身分帳』が原案の実話ベース作品だった
  • 田村義明さんは4歳で孤児院に預けられ、12歳で少年院初収容、前科10犯・延べ24年という壮絶な人生を歩んでいた
  • 出所後に作家の佐木隆三さんへ自ら「小説を書いてくれ」と依頼したことが、原作「身分帳」誕生のきっかけとなった
  • 田村さんは「身分帳」出版の半年後に孤独死。佐木隆三さんが葬儀を執り行った
  • 映画は舞台を35年後の現代に置き換え、社会復帰の難しさが今も変わらないことを伝えている
  • 監督の西川美和さんは「見えてくるのは三上を取り囲む私たちのほうかもしれない」と語っている

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