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【グリーンマイル】 実話の冤罪死刑と電気椅子の失敗。映画とは大きな違いも

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【グリーンマイル】 実話の冤罪死刑と電気椅子の失敗。映画とは大きな違いも サムネ

映画『グリーンマイル』(1999年公開)は、スティーヴン・キングさんの同名小説を映画化した作品です。

大恐慌時代のアメリカ南部を舞台に、

超自然的な治癒能力を持つ黒人の死刑囚ジョン・コーフィと、彼を見守る看守たちの葛藤と奇跡を描いた名作です。

この記事では、

  • 『グリーンマイル』が実話を元ネタにしているかどうかの結論
  • 作品に深く投影されたジョージ・スティニー事件とジョー・アリディ事件の実際の経緯
  • デラクロアの凄惨な処刑シーンの元になった電気椅子事故の真相
  • 映画と実話の主な違い
  • 制作秘話とキャスティングの裏側

こちらを解説していきます。

『グリーンマイル』は実話を元ネタにした作品

結論から言うと、『グリーンマイル』は特定の一人の実在人物を直接モデルにした作品ではありません。

原作者のスティーヴン・キングさんは

「大恐慌時代の南部における死刑囚監房について広い調査を行った」

と述べるに留まっており、

特定の事件をインスピレーション源として明言した記録は存在しないです。

しかし、物語のメインである「無実の黒人男性が不当な司法によって処刑される」という構造は、

20世紀アメリカで実際に起きた複数の冤罪事件とかなり重なっています。

特に注目されているのは、

1944年に14歳で処刑されたジョージ・スティニー・ジュニアさんと、

1939年に知的障害を持ちながら冤罪で処刑されたジョー・アリディさんの2件の事件です。

また、映画で描かれるシーンの「電気椅子の凄惨な失敗」も、

1990年代にフロリダ州で実際に起きた死刑執行事故をそのまま反映したものです。

ジョージ・スティニー・ジュニアさんとは

名前ジョージ・ジュニアス・スティニー・ジュニア(George Junius Stinney Jr.)
生年月日1929年10月21日
出身地サウスカロライナ州アルコル
処刑日1944年6月16日(享年14歳)
処刑方法電気椅子
名誉回復2014年12月17日(死後70年)

ジョージ・スティニー・ジュニアさんは、アメリカ近代史において

「20世紀における最も若い死刑執行の記録」を持つ人物とされています。

白人少女2人の殺害容疑で逮捕されたスティニーさんは、

弁護士も立ち会わない状況で警察の尋問を受け、口頭での「自白」を強要されました。

裁判はわずか2時間半で終了し、

全員白人の陪審員が10分間の審議で有罪を決めるという、正義とは程遠い手続きで死刑が決定したのです。

ジョー・アリディさんとは

名前ジョー・アリディ(Joe Arridy)
生年1915年頃
出身地コロラド州プエブロ
IQ46(重度の知的障害)
処刑日1939年1月6日(享年23歳)
処刑方法ガス室
名誉回復2011年1月7日(死後72年)

ジョー・アリディさんは、コロラド州で少女殺害容疑をかけられた知的障害を持つ青年です。

IQ46という数値が示す通り、善悪の判断能力をほとんど持っておらず、

精神科医たちが「自白の信頼性はない」と証言したにもかかわらず、陪審員は有罪を宣告しました。

アリディさんは、

自分が「死ぬために椅子に縛り付けられること」

の意味を理解しないまま最期を迎えたとされています。

彼は「死刑囚監房で最も幸せな男」と呼ばれており、

処刑の直前まで刑務所長から贈られたおもちゃの汽車で遊んでいたという記録が残っています。

『グリーンマイル』の実話の時系列

1936年8月:ジョー・アリディさん逮捕

コロラド州で15歳の少女が殺害・暴行されるという事件が発生しました。

IQ46のアリディさんが容疑者として逮捕されます。

警察の執拗な誘導によって、事実と矛盾する内容の口頭での自白が引き出されました。

このとき、真犯人の自宅からは凶器が発見されており、被害者の生存した妹が真犯人を直接指さしていました。

しかし、警察が誤認逮捕を認めると警察としての信用と威厳に関わるため、アリディさんへの追及が続けられたのです。

1937年4月:アリディさんの裁判

アリディさんの公判が開始されました。

複数の精神科医が

「善悪の判断能力がなく、自白の信頼性もない」

と証言しました。

それでも陪審員は有罪の評決を下しました

1939年1月6日:アリディさんの死刑執行

コロラド州のガス室にてアリディさんの死刑が執行されました。

最後の食事に何が食べたいか聞かれた彼は、

「アイスクリームが食べたい」

と答えたとされています。

刑務所内でアリディさんの無罪を確信していた刑務所長ロイ・ベストさんは、

なんとか彼を救おうと嘆願活動を続けましたが、国家の決定を覆すことはできませんでした。

アリディさんは死刑執行の意味を理解しないまま、笑顔で刑場へと歩いていったそうです。

1944年3月24日:ジョージ・スティニーさん逮捕

サウスカロライナ州アルコルで、白人少女2人(11歳と7歳)の撲殺遺体が溝の中から発見されました。

前日に少女たちと言葉を交わしたとされる14歳のジョージ・スティニーさんが翌日に逮捕されます。

警察は保護者も弁護士も同席させないまま尋問を行い、口頭での自白を得たと発表しました。

逮捕の直後、スティニーさんの父親は職場から解雇され、

一家は脅迫を受けて町から逃亡することを余儀なくされています。

1944年4月24日:スティニーさんの裁判

全員が白人で構成された陪審員による裁判が始まりました。

国選弁護人は一切の抗弁や証人喚問を行いませんでした。

裁判はわずか2時間半で終了し、陪審員はたった10分間の審議で有罪の評決を下したのです。

1944年6月16日:スティニーさんの死刑執行

電気椅子による死刑が執行されました。

体重40kgにも満たない少年の体は、大人用の電気椅子に固定することができませんでした。

スティニーさんが刑務所に持参した聖書を座布団代わりに敷いて電極が装着され、

通電の衝撃でマスクが外れ、涙と恐怖に歪んだ顔が立ち会い人の目に晒されました。

逮捕からわずか84日という驚異的なスピードで、14歳の少年の命が奪われたのです。

1990年5月4日:ジェシー・タフェロさん事件(電気椅子の失敗)

フロリダ州の電気椅子による死刑執行において、

担当技術者が誤って天然の海綿スポンジの代わりに市販の合成スポンジを使用しました。

合成スポンジは熱伝導率が低く燃えやすいため、

通電と同時にジェシー・タフェロさんの頭部から約15cmもの炎と煙が噴き上がりました。

執行完了まで計3回の通電と多大な時間を要し、

処刑室内には肉が焦げる凄まじい臭いが充満したとされています。

1997年3月25日:ペドロ・メディナさん事件

タフェロさんの事件から7年後、同じフロリダの電気椅子で再び凄惨な失敗が起きました。

電極スポンジへの処理が適切でなかったため、

執行中にペドロ・メディナさんの頭部から約30cmの炎と黒煙が吹き出したのです。

立ち会った牧師はその後、次のように告発しました。

「我々は国家の名において、彼を11分間かけて生きながら焼き殺した」

この言葉は大きな反響を呼び、

電気椅子という処刑方法のやり方をめぐる激しい法的論争が起きました。

結果として、多くの州が致死性薬物注射への移行を余儀なくされるきっかけになったのです。

2011年1月7日:アリディさんへの死後恩赦

恩赦(おんしゃ)とは、

行政権の判断によって刑事罰を消滅させたり、裁判による刑罰の内容を軽くしたりする制度です。

コロラド州知事ビル・リッターさんにより、

アリディさんの自白が警察による強要で引き出された虚偽のものであったと公式に認定されました。

処刑から72年の時を経て、無条件の死後恩赦が下されました。

2014年12月17日:スティニーさんの有罪判決棄却

サウスカロライナ州地裁のカルメン・ミューレン判事が、

「重大な憲法違反(適正手続きの欠如、実効的な弁護の不在)」

を理由にスティニーさんの有罪判決を棄却しました。

死後70年を経て、ようやく法的な無罪と名誉の回復が認められたのです。

映画『グリーンマイル』と実話の違い

項目映画での描写実際の事実
主人公の体格身長210cm超の大柄な黒人男性(ジョン・コーフィ)体重40kg以下の小柄な14歳の少年(スティニーさん)
知的障害の描写ジョン・コーフィは超自然能力を持つが知的には成熟アリディさんはIQ46で善悪の判断能力がなかった
看守との関係看守たちが無実を確信し処刑を止めようと苦悩する刑務所長は嘆願を試みたが制度に阻まれ救えなかった
死刑執行サディスティックな看守がスポンジを濡らさず火炎が発生実際にフロリダで技術的ミスによる炎上事故が2件発生
奇跡・超自然要素治癒能力・死者の蘇生など魔法的なもの実在の事件に奇跡的要素はなく、冷徹に処刑が行われた

「大柄な黒人男性」という設定の意味

実在のスティニーさんは体重40kg以下の小柄な少年でした。

映画のジョン・コーフィは身長210cmを超える圧倒的な体躯の大人として描かれています。

キングさんはこの真逆な設定を意図的に作り、当時の白人社会が自動的に抱く

「大柄な黒人男性=暴力的・脅威」

という人種的な思い込みを最大化するために使っています。

外見上は恐怖の対象である大男が、

  • 暗闇を怖がる
  • 他者の痛みに涙する
  • ネズミの命を大切にする

という「無垢な存在」であるというギャップを描くことで、

偏見によって決定する司法がいかに不条理なものかを観客に突きつけているわけです。

デラクロアの処刑シーンはほぼ「実際の事故」の再現

映画で看守ペルシーが、スポンジを故意に濡らさず電気椅子による処刑を行うというシーンは、「悪意ある行為」として描かれています。

しかし実際には、1990年のタフェロさんと1997年のメディナさんの事件において、

「悪意」ではなく「技術的なミス」によって全く同じことが現実に起きていました。

国家が管理する処刑であっても、このような「野蛮な失敗」が避けられないという事実を、

映画は歴史的事件の構造をそのまま使ったのです。

映画『グリーンマイル』制作の舞台裏

ダラボン監督はわずか8週間で脚本を書き上げた

『ショーシャンクの空に』に続いて二度目のキング作品映画化を熱望したフランク・ダラボン監督は、

連載完結直後にキングさんを直接訪ね、映画化の約束を取り付けました。

その後、わずか8週間で3時間に及ぶ膨大な脚本を書き上げています。

ダラボン監督はインタビューでこう語っています。

「キングの原作が持つ魂、

登場人物たちが語る独特の泥臭い南部訛りや表現を可能な限り変更せず、

忠実にトレースすることに最大の敬意を払った」

マイケル・クラーク・ダンカンさんをブルース・ウィリスさんが推薦

ジョン・コーフィ役を演じたマイケル・クラーク・ダンカンさんの起用には、

前年の『アルマゲドン』で共演していたブルース・ウィリスさんが深く関わっています。

ウィリスさんがダラボン監督に直接

「コーフィにふさわしい男を見つけた」

と売り込んだことで、オーディションへの道が開かれたのです。

共演したデヴィッド・モースさんはインタビューでこう述べています。

「マイケルはその巨体の中に、

計り知れないほど壊れやすく、純粋な心を持っていた。

彼が現場に立つだけで、

全員がコーフィという存在の神聖さを信じることができた」

ダンカンさんはこの演技でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされることになりました。

ミスター・ジングルスは15匹のネズミが演じた

映画で驚異的な演技を見せるネズミのミスター・ジングルスは、

実際には15匹の訓練されたネズミがシーンごとに使い分けられていました。

撮影現場にはネズミたちそれぞれの名前が書かれた専用の小さなディレクターズチェアが用意されており、

俳優たちは床に照射された極細のレーザーポインターの光を使って、

ネズミが適切な方向へ視線を向けるタイミングを合わせながら演技を行っていたそうです。

聖クリストフォロのメダルに込められた意味

映画で難病を治療された所長夫人メリンダが、感謝の印としてジョン・コーフィの首にかける銀のメダルは

「聖クリストフォロ(セント・クリストファー)」の肖像が刻まれたものです。

キリスト教の伝説において、クリストフォロは

「並外れた巨体と怪力を持つ心優しい男で、

ある日小さな子供を背負って激流の川を渡ったところ、

その子供がキリスト自身であり、

地上の罪をすべて背負っていたため子供の体重が地球と同じ重さになっていた」

とされる聖人です。

人類の痛みと邪悪さを身に宿し、

泣きながら死刑台へと歩んでいくジョン・コーフィの運命と完全に重なる、名演出と言えます。

まとめと人気の実話解説記事

  • 『グリーンマイル』は特定の一人をモデルにした作品ではなく、複数の実在の冤罪事件を深く投影したフィクション
  • 14歳で処刑されたジョージ・スティニー・ジュニアさんは、20世紀アメリカ最年少の死刑執行記録を持ち、死後70年で無罪が認められた
  • IQ46のジョー・アリディさんは「死刑囚監房で最も幸せな男」と呼ばれ、自分が死ぬ意味を理解しないまま処刑された
  • 劇中のデラクロアの凄惨な処刑シーンは、1990年と1997年にフロリダで実際に起きた電気椅子の炎上事故をもとにしている
  • ジョン・コーフィの「大柄な黒人男性」という設定は、人種的偏見を逆手に取る意図的な演出だった
  • 映画公開から25年が経った今も、冤罪と死刑制度をめぐる問いかけは現代社会の課題であり続けている

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